感染管理指針(更新日:令和5年4月1日)

趣旨

 本指針は、独立行政法人地域医療機能推進機能(以下JCHOという。)における感染管理の体制、医療関連感染の予防策等に係る基本的方針を示すものである。JCHOの各病院は、本指針に基づき適切な医療関連感染の予防を推進し、患者・利用者サービスの質の保証及び安全な医療の提供に努めるものとする。

Ⅰ. 感染管理のための基本的考え方

 JCHOの基本理念に基づき、医療関連感染を未然に防ぐことを第一として取り組み、感染症患者発生の際には拡大防止のため、原因の速やかな特定と化学的根拠に基づく対策の実施により制御、終息を図る。院内の感染管理指針及び感染管理マニュアルに則った医療を患者、利用者に提供できるように取り組む。

Ⅱ. 院内感染対策委員会の設置

 医療関連感染対策の推進のため、感染対策委員会を設置する。感染対策委員会は以下に掲げる事項を満たすものとする。
(1)感染対策委員会の管理及び運営に関する規定を定める。
(2)感染対策委員会の構成員は、院長、看護部長、事務部長を始め管理的立場にある職員及び診療部門、看護部門等、各部門を代表とする職員により職種横断的に構成する。
(3)委員会は原則として月1回開催するが、重大な問題が発生した場合は適宜開催する。
(4)院内の各部門から医療関連感染に関する情報が感染対策委員会に集約され、感染対策委員会から状況に応じた対応策が現場に迅速に還元される体制を整備し、重要な検討内容については、院長へ報告する。
(5)医療関連感染が発生した場合には、速やかに発生の原因を分析し、改善策の立案及び職員への周知を図ると共に院長へ報告する。
(6)感染対策委員会で立案された改善策の実施状況を必要に応じて調査し、見直しを行う
(7)院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を整える。特定抗菌薬(広域スペクトラム抗菌薬、抗MRSA薬等)については、届出制又は許可制の体制を整備する。
(8)検体からの薬剤耐性菌の検出情報、薬剤感受性情報など、医療関連感染対策に重要な情報が臨床検査部門から診療部門へ迅速に伝達されるよう、院内部門間の感染症情報の共有体制を確立する。

Ⅲ. 感染制御チーム(Infection Control Team)活動の推進

 医療関連感染防止に係る諸対策の推進を図るため、感染管理部門内に感染制御チームを設置する。感染制御チームは医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師及び必要な他職種の職員により構成する。

 活動内容

(1)最新のエビデンスに基づき、標準予防策、感染経路別予防策、職業感染予防策、疾患別感染対策、洗浄・消毒・滅菌、抗菌薬適正使用等の内容を盛り込んだマニュアルを作成し、各部署に配布する。手順書は定期的に新しい知見を取り入れ、適宜・点検及び見直しを行う。
(2)職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染に関する研修を行う。
(3)院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を構築する。特に、特定抗菌薬(広域スペクトラムを有する抗菌薬、抗MRSA薬等)については、届出制又は許可制の体制をとる。
(4)1週間に1回程度、院内を巡回し医療関連感染事例を把握するとともに、感染防止対策の実施状況の把握、確認、指導を行う。感染制御チームによるラウンドは、チームのメンバーが全員で行うことが望ましいが、少なくとも2名以上で行う。なお、各病棟を毎回巡回することを基本とするが、リスクの高い病棟は毎回巡回し、それ以外の病棟についても巡回を行なっていない月がないものとする。患者に侵襲的な手術・検査等行う部署についても、2ヶ月に1回以上巡回する。
(5)微生物学的検査に係る状況を記した「感染情報レポート」を週1回作成し、院内で疫学情報を共有するとともに、感染防止対策に活用する。

Ⅳ. 抗菌薬適正使用支援チーム活動の推進

1.感染管理部門内に抗菌薬適正使用支援チームを設置し、感染症治療の早期モニタリングとフィードバッグ、微生物検査・臨床検査の利用の適正化、抗菌薬適正使用に係る評価、抗菌薬適正使用の教育・啓発等を行うことによる抗菌薬の適正な使用の推進を行う。
2.抗菌薬適正使用支援チームは、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師で構成する。
3.抗菌薬適正使用支援チームは以下の業務を行う。
(1)抗MRSA薬、広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者、菌血症等の特定の感染兆候のある患者など、感染症早期からのモニタリングを実施する患者を設定する。
(2)感染症治療の早期モニタリングにおいて、(1)で設定した対象患者を把握後、適切な微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況、初期選択抗菌薬の選択・用法・用量の適切性、必要に応じた治療薬物モニタリングの実施、微生物検査等の治療方針への活用状況などを経時的に評価し、必要に応じて主治医にフィードバッグを行う。
(3)適切な検体採取と培養検査の提出(血液培養の複数セット採取など)や、アンチバイオグラムの作成など、微生物検査・臨床検査が適正に利用可能な体制を整備する。
(4)抗菌薬使用状況や血液培養複数セット提出率などのプロセス指標及び耐性菌発生率や抗菌薬使用量などのアウトカム指標を定期的に評価する。
(5)抗菌薬の適正な使用を目的とした職員研修を少なくとも年2回程度実施する。また院内の抗菌薬使用に関するマニュアルを作成する。
(6)院内で使用可能な抗菌薬の種類、用量等について定期的に見直し、必要性の低い抗菌薬について院内での使用中止を提案する。
4.抗菌薬適正使用支援チームは、必要時に他医療機関から抗菌薬適正使用の推進に関する相談等を受ける。

Ⅴ. 感染防止対策地域連携の推進

1.感染対策向上加算1算定
(1)保健所及び地域の医師会と連携し、感染対策向上加算2又は3に係る届出を行った医療機関と合同で年4回程度、定期的に院内感染対策に関するカンファレンス(薬剤耐性菌等の検出状況・感染症患者の発生状況・医療関連感染対策の実施状況・抗菌薬の使用状況等)を行い、その内容を記録する。このうち少なくとも1回は、新興感染症等の発生等を想定した訓練を行う。
(2)感染対策向上加算2・3又は外来感染対策向上加算を算定する医療機関から、必要時に院内感染対策に関する相談等を受ける。
(3)院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加する。
(4)新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者を受け入れる体制を整備し、そのことについてホームページ等により公開する。
(5)新興感染症の発生時等に感染症患者を受け入れることを念頭に、汚染区域や清潔区域のゾーニングを行うことができる体制を整備する。
(6)感染対策向上加算1に係る届出を行なっている医療機関と連携し、少なくとも年1回程度、当該加算に関して連携しているいずれかの医療機関に赴き、既定の様式に基づく感染防止対策に関する評価を行い、当該医療機関にその内容を報告する。また、年1回、当該加算に関して連携しているいずれかの医療機関から評価を受ける。
2.指導強化加算算定
(1)感染制御チームの専従医師または看護師が、過去1年間に4回以上、感染対策向上加算2または3に係る届出を行った保健医療機関を訪問して院内感染対策に関する助言を行う。

Ⅵ. 院内感染管理者の活動の推進

医療関連感染対策を推進するため、院内感染管理者は院内感染対策委員会および ICT と連携し以下の業務を行い、感染対策の総括的役割を果たす。
1.感染対策の指針の策定及び感染管理体制の構築
2.感染対策の実施に関する権限を委譲されると共に責任を持つ。また、重要事項を院長に報告する。
3.定期的に院内ラウンドし、感染対策上の問題を改善するための介入や教育を行う。
4.組織横断的に活動し、院内感染の発生動向(サーベイランス)をもとに、原因究明と拡大防止のための介入を行う。
5.緊急的事項が生じた場合、必要メンバーを招集し対応する。
6.感染対策に関する職員への教育・研修を実施する。
7.病院職員に対してコンサルテーションを行う。
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