[腎センター内科]後期研修医向け指導医メッセージ(OBの声)

OBの声[腎センター内科]

             T.Kさん 現所属: 京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学教室
                               (出身大学:大阪大学 初期研修病院:聖路加国際病院)

腎臓内科の後期研修を考えている方へ

初期研修と違い、後期研修あるいはその先のトレーニングで我々が期待するものは、個々人のキャリアによって大きく異なるように思います。そして、ある特定の病院で自分が望む研修を受けられるかどうかを判断するためには、私の経験からすると、その施設のスタッフから直接話を聞き、実際に現場を見てみる以外にいい方法はありません。しかし、時間的制約から、自ら足を運んで確認できるのは、せいぜい多くても10施設が限度でしょう。その意味で、(もはや教育病院のホームページの標準装備となっている)研修医による研修紹介記事が、研修候補を絞り込むためのスクリーニングツールとして参考になることは間違いありません。しかしながら、研修医による情報には幾つかの「バイアス(偏り)」が存在していることを、誰でも直感(あるいは確信)として感じていることと思います。

1.選択バイアス(Selection bias)
 記事を書いている研修医の多くは、希望する研修先を自ら選択して来ています。自分のニーズにあった病院を選んでいる人
 は、当然満足度が高くなるはずです。もし研修に期待するものが記事を書いた研修医と異なる場合、その研修内容が過大評価
 されてしまう可能性が十分にあります。

2.情報バイアス / 思い出しバイアス(Information bias / Recall bias)
 (自分にとって)いい研修を受け満足している医師ほど、研修での貴重な経験についてより詳細に記憶しているものです。そ
 して、自分で積極的に病院を選んだ人であれば、(いい意味で)物事を自分の都合のよい方に解釈しようする心理学的な効果
 も無視できません。つまり満足度が高い医師のコメントからは、研修のネガティブな面はマスクされてしまう傾向がありま
 す。

3.出版バイアス(Publication bias)
 我々が見ることができる研修紹介の多くは病院ホームページに掲載されているものです。どんな研修病院にも長所・短所はあ
 るはずですが、当然その病院に不利益になるような内容、すなわち研修の問題点は載りにくくなります。また病院側が満足度
 の高い医師のコメントを載せようするのは極めて自然なことで、その結果として公表される内容が過大評価されている可能性
 は否定できません。

全ての情報がこの種のバイアスから完全に自由になることはなく、また、偏った見方にこそ、隠れた真実を垣間見せてくれるチャンスがあるのは事実です。しかし、数ある候補の中から、比較の視点を持ち、より自分の期待に近い研修先を探す手段として、この種の情報だけでは全く不十分であるというのが私の意見です。

さて、前置きが長くなりましたが、私は腎臓内科の後期研修先として仙台社会保険病院(仙台社保)を選びました。おそらく他施設で研修した多くのレジデントがそうであるように、私は自ら選んだ研修病院でのトレーニングに大変満足しています。そして光栄なことに今回、仙台社保での研修についてのコメントを依頼されました。しかしながら、上で述べてきた理由により、私はここで仙台社保の教育プログラムに対する個人的な感想や、エピソードを披露するつもりは全くありません。代わりに、私の独断ですが、仙台社保での研修を測る指標として最もニュートラルであろう、私自身の仙台社保での経験症例およびその数についてのみ以下に記すことにしました。賛否両論あると思いますが、おそらくスクリーニングツールとして研修内容を判断するのであれば、私はこれだけでも仙台社保の長所(ならびに短所)を十分に知ることができると思います。そしてこの情報のよいところは、他施設と比較ができる点にあります。もしこの情報を見て興味を持った方は、是非一度仙台社保の腎臓内科に直接見学に行くことをお薦めします。最初に述べたように、最終的にいい施設を見つけるためには自分の目で見て判断するほかありません。おそらく気に入れば即決、気に入らなければ即却下、それぐらいのインパクトが仙台社保にはあると思います。それでは、皆さんが今後自分のキャリアパスを高める上で、納得のいく後期研修先を見つけられるよう、切に願っています。

研修期間の担当症例

担当入院患者数 計 182例
担当患者 腎生検数 計  75例
※1 私が主治医として担当した症例のみ(研修期間14ヶ月)。腎臓内科全体の症例数ではない。
※2 のべ人数(同一患者でも入院時期が異なれば別にカウント)。重複はなし(1人の患者で複数病名がある場合は1例としてカウント)。
※3 透析シャントPTA入院症例は除く(当院ではPTAは専門の放射線科医が行うため、腎臓内科医は原則的に簡単な術前術後管理のみ行う。なお、研修中に私が担当したシャントPTA入院患者数は計110名)。

担当入院患者 内訳
IgA腎症 35例
糖尿病性腎症 29例
巣状糸球体硬化症 11例
腎硬化症 9例
膜性腎症 7例
ANCA関連腎炎 7例
感染後急性糸球体腎炎 4例
薬剤性腎症(NSADS、造影剤) 4例
ループス腎炎 3例
間質性腎炎 3例
腎動脈狭窄 3例
ひ薄基底膜病(Thin basement membrane disease) 3例
微小変化群 2例
肥満関連腎症(Obesity related nephropathy) 3例
間質性腎炎 2例
逆流性腎症 2例
アミロイドーシス 2例
コレステロール塞栓症 2例
膜性増殖性腎症 1例
多発性骨髄腫 1例
悪性高血圧症 1例
低形成腎 1例
溶血性尿毒症症候群(HUS) 1例
C型肝炎関連腎炎 1例
透析合併症(心・脳血管障害、二次性副甲状腺機能亢進症、敗血症など) 23例
その他(電解質異常、他疾患(敗血症など)に伴う腎機能障害など) 25例
※4 受け持ち症例の多い順。なお、ここでは病名として分りやすいように、臨床診断名と組織診断名を区別していない。

参考資料(私が研修していた時の仙台社会保険病院のデータ
全病床数 430床
腎臓内科 病床数(維持透析ベッド64床は除く) 140床
腎臓内科 常勤スタッフ数(初期・後期研修医は除く) 11名
腎臓内科 後期研修医数(初期研修医は除く。著者と同立場。) 5名(著者を含む)
 

以上
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